インプラント概論

No.3本当に骨移植をしないでもソケットリフトはできるのだろうか・・・

この疑問を解決する報告があります。
Palmaは動物を使った実験で骨移植群と骨移植をしない群に対してサイナスリフトを行いインプラントを植立しています。
結果は同じであると結論づけています。
驚いたことに、骨移植をすると、移植骨はまず吸収され、その後新しい骨になるのに対し、骨移植をしないと直接上顎洞底粘膜から骨が出来てくるという顕微鏡での観察結果を示しています。
この研究はサイナスリフトでの研究ですが、ソケットリフトでも同様だと思われます。

日本では第38回日本口腔インプラント学会で神奈川歯科大学人体構造学講座の渡辺孝夫、高橋常男らはイヌ前頭洞に人間の治療に準じて上顎洞挙上術(サイナスリフト)を行い、骨補填と骨補填なしで比べています。
またインプラントはHAコーティングインプラントと非HAコーティングインプラントを使用し骨補填材の有無によるインプラント周囲の骨接触率を検討しています。

その結果ハイドロキシアパタイトコーティングインプラント(HA)は骨補填材の有無によらずに高い骨接触率を示したと述べています。岸本歯科医院で使用しているインプラントもハイドロキシアパタイトコーティングインプラントであり、このインプラントを使用すれば骨移植をしなくてもインプラント周囲に新生骨が出来ると思います。
骨移植のために他部位にメスを加えなくてすむなら、HAコーティングインプラントを用い骨移植なしでインプラント植立したほうが良いと考えています。

残念なことにこの研究はまだ論文にされていないようで、英文での論文発表を心待ちにしています。
Palma、渡辺の両研究はサイナスリフトでインプラント植立を行っていますが、ソケットリフトのほうが挙上された粘膜と上顎洞底骨との間に凝血塊がたまりやすく、したがって新生骨が出来やすいと考えています。
この凝血塊の重要性はThorにより述べられていて、サイナスリフトで挙上された手術部位を生理食塩水で洗い流さないで凝血塊を大切にすることが重要だとしています。

一方、Hatanoは静脈血を採取し、粘膜と上顎洞底骨との間に注入してサイナスリフトを行っています。
積極的に凝血塊を挙上された空間に作っているのです。

私はソケットリフトで上顎洞底粘膜を挙上して周りから自然に出てくる血液を大切にしています。まとめますと、岸本歯科医院では骨移植のために他の部位にメスは加えない、サイナスリフトのために大きく手術部位を広げない方法、骨移植を伴わないソケットリフト法を採用しています。
かっこよく言い換えると、minimal intervention(最小侵襲治療)の治療をめざしています。

以下に根拠となった文献を記載します。(2009年1月10日)
1)Palma,V.C.,Magro-Filho,O.,de Oliveira,J.A.:Bone reformation and implant integration following maxillary sinus membrane elevation:An experimental study in primates.;Clin. Implants Dent. Relat. Res.,8,11-24,2006.
2)Hatano,N.,Sennerby,L. and Lundgren,S.:Maxillary sinus augmentation using sinus membrane elevation and peripheral venous blood for implant-supported rehabilitation of the atrophic posterior maxilla:case series.;Clin.Implant Dent Relat.Res.,9,150-155,2007.

関連記事

院長のインプラント概論

ページ上部へ戻る