インプラント概論

No.7当院のメインテーマは骨移植をしないソケットリフト法と骨が薄くなった上顎前歯部のridge expansion法・・・

今回は骨移植をしないソケットリフト法について述べます。

上顎奥歯にインプラントを植立する場合、注意すべきことがあります。
インプラント植立部位に上顎洞という空洞が近接している場合が少なくありません。
蓄膿症という病気がありますが、上顎洞に膿がたまったことをいいます。
要するに膿が上顎洞にたまれば蓄膿症という病気で、たまらなければ正常な上顎洞ということになります。
いずれにせよインプラントを植立する時にその先端部が上顎洞に突き出ることがあるのです。

もちろん蓄膿症の人は上顎洞に突き出るインプラントの植立はできません。
正常な上顎洞の人は先端部が突き出てもインプラントの植立が可能です。
サイナスリフト法とソケットリフト法という方法を使ってインプラント先端部に骨を作って植立します。
サイナスリフト法は蓄膿症の手術に準じて鼻の横の骨に穴を開け、上顎洞とその上に薄く張っている粘膜を目で確認して上顎洞と粘膜との間に骨移植をおこないます。一方ソケットリフト法はインプラントを植立するための穴をノミで叩いて上顎洞底の骨を通過し、その上にある粘膜を破らないようにして手探りで骨移植を行いインプラントを植立する方法です。

簡単にまとめるとサイナスリフト法は大掛かりな手術だけれども粘膜が破れないことを目で確認して骨移植を行える方法であり、ソケットリフト法は簡単に行えるけれども、粘膜がやぶれていないことを目で確認することがむずかしい手術であるということです。もし粘膜が破れていて骨移植を行うと大変なことになります。人為的な蓄膿症を作りだします。目で確認を行うサイナスリフト法でも粘膜が破れて、移植骨が漏れ出し蓄膿症になった事故が後をたちません。一方、近年サイナスリフト法においてLundgrenやThorが、ソケットリフト法においてNedirやRobertが骨移植を行わなくても上顎洞に骨が出来てくることを報告しています。この方法でインプラント植立を行うと、不幸にも粘膜がやぶれても人為的な蓄膿症を作り出すことがほとんどないと考えられます。当院では骨移植を伴わないソケットリフト法を採用してよい成績が得られています。今後上顎洞との距離が小さい部位にインプラントを植立する場合、この方法を採用する歯科医師が増えると予想しています。サイナスリフト法でもソケットリフト法でも植立したインプラントが上顎洞の中に入ってしまう事故も報告されており、リスクを理解したうえでのインプラント植立を受ける必要があると思います。以下に根拠となった文献を示します。

1)Lundgren,S.,Andersson,S.,Gualini,F. and Sennerby,L.:Bone reformation with sinus membrane elevation:A new surgical technique for maxillary sinus floor augmentation.;Clin Implant Dent Relat Res.,6,165-173,2004

2)Thor,A.,Sennerby,L.,Hirsch,J.M.and Rasmusson,L.:Bone formation at the maxillary sinus floor following simultaneous elevation of the mucosal lining and implant installation without graft material:An elevation of 20 patients treated with 44 astra tech implants.;J Oral Maxillofac. Sur.65,64-72,2007.

3)Nedir,R.,Bischof,M.,Vazquez,L.,Szmukler-Moncler,S.and Bernard,J.P.:Osteotome sinus floor elevation without grafting material:a one year prospective pilot study with ITI implants.;Clin.Oral Implants Res.,17,679-686,2006.

4)Robert,F. and Per,A.:Osteotome sinus floor elevation and simultaneous placement of implants-a 1-year retrospective study with astra tech implants.;Clin Implant Dent.Relat. Res.,10,62-69,2007.

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