インプラント概論

上顎洞挙上術ソケットリフト法の治療期間

上顎洞挙上術ソケットリフト法の治療期間

 

上顎洞挙上術ソケットリフト法の治療期間は、使用するインプラントによってかなり違います。

表は2010年にオーストラリアの学会誌で発表した岸本歯科での治療期間です。
インプラント治療論文
骨移植しないソケットリフト法でHAコーティングインプラントを埋入した後、上部構造を装着するまでの期間です。
平均3から4か月程度です。

学会誌でもレントゲンを載せてありますが、上顎洞との距離がほとんどない症例でも同様です。

このような場合、一般的にはサイナスリフトで上顎洞の骨造成をしてから、インプラント埋入することになるので、1年ぐらいはかかるかもしれません。
当院で骨幅がかなり少ない部位へのソケットリフトでは、厚膜のハイドロキシアパタイトコーティングインプラントを使っています。

掲載論文の項にオーストラリアの論文を載せてありますので、参考にしてください(Journal of the Australian ceramic society 46:34-37,2010)。

 

 最近ではインターネットでいろいろ調べて来院する患者さんが増えてきました。
ご自身の骨幅を担当医にお聞きになり、治療期間についても質問されたらいいと思います。
おそらく、チタンインプラントでは長い治療期間になると思います。

私は、垂直的骨幅が少なく、上顎洞が近接している上顎洞挙上術には、厚膜のハイドロキシアパタイトコーティングインプラントを用いた骨移植しないソケットリフト法がかなり有効であると思います。

 当院は骨移植しないソケットリフトを好んで行っています。
サイナスリフトに比べて、手術侵襲が少ないこと、移植材を用いないので、不幸にも上顎洞粘膜(シュナイダー膜、schneiderian membrane)が破れても移植材が上顎洞の中に飛び散っても上顎洞炎になる可能性が低いこと、治療期間が短いことが理由です。

骨移植をしないのに、どうして短いのかと疑問に思うと思います。
骨移植を行うと、いきなり骨が完成するわけではありません。
移植した骨が吸収されて、その後新しい骨ができてくるのです。

骨移植を行わない場合、直接骨ができてくるので、期間が短いとする意見があります。

以前はインプラントの表面から骨ができてくることはないと考えられていました。
しかし、現在ではインプラントに直接骨ができてくると考えられています。
これをcontact osteogenesis接触性骨形成といいます。

従来はインプラントを埋入した周囲の骨から新しい骨が出来てきて、インプラント表面に骨が到達してくると考えられていました。
これをdistance osteogenesis隔離性骨形成といいます。
しかしながら、埋入した骨とインプラントの隙間が大きい場合、インプラント表面に骨ができてくるのは難しいでしょう。
このcontact osteogenesisという現象は厚膜のHAコーティングインプラントに起こりやすい現象だと思います。
一部のチタンインプラントでも起こるかもしれません。
当院で厚膜のHAコーティングインプラントを使用する理由です。
何度か述べましたが、条件がよい部位では厚膜のHAコーティングインプラントは使いません。

(2018年10月24日)

 

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