インプラント概論
8.162022
歯が割れることもある
歯が割れることもある
患者さんは痛みを訴えて来院されました。
どの歯が痛いのか?上の歯が痛いのか?下の歯が痛いのか?わからない状態です。
頭痛も訴えています。
レントゲンでははっきりと原因歯がわからず、叩いたり、水をかけたり、空気をかけたりしながら、疑わしい歯を探していきます。
結果、赤矢印⇒で示した歯が最も疑わしいと判断しました(写真1)。
しかし、痛い原因がはっきりしないのです。
虫歯ではないことは、はっきりしています。
考えられるのは、レジン充填による歯髄炎か、歯がわれていることが最も疑われます。
いずれにしても、歯髄をとる必要があること、歯が割れている場合、歯を大きく削っていくと、破折線が見えることになることを説明します。
ただ、確定診断ができていないので、間違った歯を削ってしまうことがあることを説明して、しばらく様子をみることになるか、治療を始めるか、患者さんの希望を優先します。
実はこのようなことは、しばしばおこり、歯科医師もはっきりと確定診断できず、気のせいでしょうとされることもあり、患者さんは複数の歯科医院を渡り歩くこともあります。
今回よく説明し、患者さんの理解を得たうえ、神経を取る治療(抜髄)を行うことになりました。
神経に到達するため、歯を大きく削ると、明らかな歯の破折線が明らかになりました赤矢印⇒(写真2)。
削る前には破折線がわからなくても、大きく削ると破折線ははっきりと見えるようになります。
神経を取る治療、抜髄・根幹充填の後、歯の内部をレジンで接着補強し、金属による全部被覆冠でかぶせて、歯の破折線が大きくならないことを目的としました(写真3・4)。
残念ながらこのような場合、予後は見通せないです。
早期に歯を失うこともあり得るのです。
ちなみに、写真1の黄色⇒で示した歯は、すでに神経が取ってあり、歯の根が大きく割れて、まわりの骨まで大きく影響を及ぼしています。
神経(歯髄)をとると、歯の寿命が短くなるのです。
歯痛を訴える場合、歯に原因があることが大部分です。
しかし、循環器を専門とする先生方は歯痛のとき心筋梗塞を疑います。
私たち歯科医は歯痛の原因は歯だけにもとめないように、原因がはっきりとしない場合、心筋梗塞もあり得ることを考慮しています。
また、頭痛を訴えて、脳外科を受診するかたもいます。
いろいろ検査して、よくわからず、頭痛の原因は歯が割れているということもあります。
余談になりますが、最近、歯が割れるかたが増えているように思います。
歯が割れるほどの力が働いたことになります。
コロナ禍の社会状況かもしれません。
あくまでも推測です。
(2022年8月15日)