インプラント概論
1.242019
安いインプラントは粗悪か?
安いインプラントは粗悪か?
医療に経済性を持ち込むのは少し抵抗がありますが、今回はインプラントの価格について述べようと思います。
歯科インプラントに関してはさまざまなホームページがありますが、価格についての意見は分かれているように思います。
激安をうたっているものから、激安は粗悪であるとするものに分かれています。
私の意見は、安いイコール粗悪であると決めつけるのは反対です。
世界的ブランドであるブローネマルクインプラントやストローマンインプラントはインプラントの購入価格そのものが高価なので、おそらく激安インプラントを売りにしているクリニックでは採用していないと思います。
採用していても、価格は別料金だと思います。
それでは、一流ブランドほどの価格ではない、インプラントはどうでしょうか。
どのインプラントも日本で販売するにあたり、厚生労働省の認可を得ています。
治験の結果を報告しているのです。
どのインプラントも治験の結果はかなり良好なはずです。
ただ、治験するにあたり、症例が厳選されていると考えられます。
すなわち、全身的な病気を患っていたり、骨が少なかったり、歯周病が進行していたり、嚙み合わせに問題があるような症例は治験の対象になっていないでしょう。
治験の対象となるような好条件の場合、どのインプラントを使用しても、結果に大きな差はないと考えていいと思います。
ただ、実際の治療の現場では、口腔内が好条件であることが非常に少ないのです。
それが現実です。
一般的に日本では、専門医制度が根付いていません。
すなわち、インプラント専門医といっても、インプラント手術だけしているわけではありません。
実際は虫歯の治療、抜歯、歯周病の管理、歯ブラシの指導など、インプラント治療に入るまでにかなりの時間がかかります。
おそらく他の治療もきちんと行い、高いレベルで安定した治療を行うならば、一人の歯科医師で1年間にいれるインプラント本数は100本から200本が限界だと思います。
インプラント埋入だけをするなら、かなりの本数を入れることができます。
歯科医師は、必ずしも良くない部位にインプラントを入れるため、多くの時間と労力をかけているのです。
低価格を追求するあまり、時間と労力をかけないが故に、インプラント治療の結果が悪くなると考えていいと思います。
したがって、安いインプラント価格でも、しっかりとした治療計画、治療手順を踏んでいれば、どのメーカーのインプラントを使用しても大きな差はないと考えていいでしょう。
また、インプラント治療後には、必ずメインテナンスが必要になります。医療に保証という概念はないのですが、歯科インプラントには存在します。競争原理が働いているからでしょう。
一部の大学病院を除いて、開業している歯科医院の大部分でインプラントの保証制度があると思います。
3〜6か月に一度の口腔内メインテナンスを受けていれば、一定期間の保証が受けられるという制度が多いと思います。
安いインプラントを売りにしているクリニックでも、メインテナンスの費用は決して安くはないでしょう。
安さを追求する患者さんが、安くはないメインテナンス費用は出さないでしょう。
おそらく、来院しなくなり保証の資格がなくなることを想定している気がします。
まるで携帯電話の契約の時に付いてくるオプションサービスを解約し忘れることを想定していることと同じに思えます。
もちろん安さを売りにしているクリニックでも、しっかりと説明を重視し、治療後においてもメインテナンスを行っている医院もあるでしょう。
結論として、どこのメーカーのインプラントを入れようとも、条件のいい部位にいれるならば、また、虫歯や歯周病の管理をしっかりしているならば、インプラントの予後は変わらないと思います。
治療を受ける医院が、インプラントを入れることだけしか考えていなければ、考えなおしたほうがいいと思います。
(2019年1月20日)